コバナシメモート

小話を書いていたが最近は愚痴しか書かなくなったBlog

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夏の思い出

もうずっと前のように思えた。
そう私が高校で吹奏楽部に入部して間もない頃に一度だけ行った野球部の応援。

それ程強くない高校だったので応援部などはなく、珍しく県大会に出場する事となった野球部を真夏の暑い中、ただただ応援曲を繰り替えし演奏したあの日は別の意味で忘れられない。

正直、野球のことはよくわからなかった。
だけど私は一年生だったから周りの先輩の目も厳しく、もう目をつぶっていても演奏できる応援曲を、真剣に譜面を見ながら演奏をして耐えるしかなかった。
すると突然歓声と吹奏楽部ではない女子達がキャーッと黄色い声をあげ、グラウンドに向かって手を振った。
丁度その時演奏がひと段落したため、私もグラウンドをみると背の高い男子が背の低い男子に「よくやったな」といわんばかりに肩をたたきベンチへ引き返していく姿が見えた。
背の高い男子を見ていたら一瞬目が合ったような気がしてドキドキしたけど、女子達もあの人目当てなんだと思っていた。
結局その試合は0対0のまま最終回に逆転ホームランを打たれ、県大会は一回戦敗退となった。
彼はメンバーからなぐさめられるようにして中心に立ちつくし、遠くからも見えるぐらいに何度も腕で顔を覆った。

それから彼は野球部のキャプテンで、最後の試合であった事を知った。
それをクラスメートから教えてもらった時は思わず泣きそうになってしまったけど、学校でもまた彼に会いたいと思う気持ちは強くなっていった。
だけど彼の周りにはいつもあの背の低い男子や女子が沢山いて、学校でも人気者という大きな壁が立ちはだかり、まだ若かった私にはそこに飛びいる勇気もなく、そして気がついた時にはもう彼の卒業式の日になっていた。

最後のチャンスになるかもしれない、一言でも伝えたい。
そう思い桜の並木道を帰る彼を待ち続けた。

彼と背の低い男子が一緒にむこうからやってくる。
桜の木にもたれながら私は彼らがやってくるのを待っていたけど、彼らの後ろからやってきた女子達に二人は囲まれてしまった。
やっぱり私には無理なのかな、何かをいって嫌われるのも嫌だし、やっぱりやめようか。
そんな事を思っていると、彼は背の低い男子に手を振って一人で歩きだした。
その時はわけがわからなかったが、あとで考えてみると、いつもいた女子たちは彼と一緒にいた背の低い男子が目的だったようにみえた。

そして私の前を彼が通り過ぎる時、私はかすれるような声で彼に声をかけた。

今私は場所は違うけどまた桜の木下を傘を差しながら歩いている。
会社員になってはじめての入社歓迎会を兼ねた花見というやつで、上司達はもう二次会会場に行ったのだけど、私はどうしても気になることがあった。

先程まで花見をしていた会場でブルーシートを片付ける背広の背の高い男性。
傘をささずに作業しているため何度も腕で顔を覆った。
着ているものも髪型もあの頃とは全然違うけど、その姿はあの夏の日と同じだった。
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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

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