コバナシメモート

小話を書いていたが最近は愚痴しか書かなくなったBlog

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もっと近くで見たいから

僕は彼女と美術展にいた。
美術学校の二年生である彼女と、フリーターの僕は度々こうして美術展にやってくる。
薄暗い部屋の中でライトアップされた数々の絵を、僕は順路に従って見ていた。

落ち葉の舞う並木道の絵。
松葉杖を持って空を自由に飛んでいる少年の絵。
太陽と月が描かれた草原の絵。
時計を見ながら歩くサラリーマンを眼を細めてみている老猫の絵。

僕は次々と額に覆われた空間を見て行くが、隣に彼女はいない。
彼女はまだ後ろの方で別の空間を眺めている。

そういえば、僕は前にも思った事がある。
美術展や映画は一人で見た方がいいと。
その方が他人を気にせずゆっくりと見られるじゃないか、と。
そう思う度にその気持ちをぐっと堪え、僕は絵を見続けた。

一通りの絵を見終えると、僕は彼女の元へ歩み寄る。
彼女は一枚の絵の前にいた。

それは一組の男女がお互い背を向けて歩いていこうとしている絵。
男はリボンのついた小箱を握り締めて、女は涙を流している。

その絵を見る彼女の表情は寂しそうだった。
僕は彼女の肩にそっと手を乗せる、すると彼女はふり返り、僕を見た。

彼女の顔は笑顔になる。

僕はこの空間を見るために彼女と来ているのかもしれない。
ココのどの空間からも感じられない大切なものを感じる為に。
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