コバナシメモート

小話を書いていたが最近は愚痴しか書かなくなったBlog

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何気ない朝

ふと起きた遅い朝の視界はいつもの白い天井だった。

もう昼過ぎだというのに締め切って蒸し暑いのは、
夕べエアコンをタイマーにしたからだと思い出し、
汗だくの体にはやはり掛け布団はかかっていなかった。

でもいつもと違うのはその掛け布団にくるまり
誰かが寝ているという事。

僕がエアコンを再度稼動させるために起き上がり、
「ピッ」となった後涼しい風が部屋を包む。
布団に目を戻すと彼女が布団に包まったまま顔だけを出して俺を見る。
「おはよう」
眠気眼のそんな顔をみるのははじめてかもしれない。
もっとみたいから、もっと近くにいたいから。

僕はまた彼女の隣に寝転がり見つめる。
恥ずかしそうにまた毛布に顔を隠す彼女の髪をそっと撫で、
夏なのに身を寄せ合った。

言葉はないけれどそれが幸せだと思った。

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

もっと近くで見たいから

僕は彼女と美術展にいた。
美術学校の二年生である彼女と、フリーターの僕は度々こうして美術展にやってくる。
薄暗い部屋の中でライトアップされた数々の絵を、僕は順路に従って見ていた。

落ち葉の舞う並木道の絵。
松葉杖を持って空を自由に飛んでいる少年の絵。
太陽と月が描かれた草原の絵。
時計を見ながら歩くサラリーマンを眼を細めてみている老猫の絵。

僕は次々と額に覆われた空間を見て行くが、隣に彼女はいない。
彼女はまだ後ろの方で別の空間を眺めている。

そういえば、僕は前にも思った事がある。
美術展や映画は一人で見た方がいいと。
その方が他人を気にせずゆっくりと見られるじゃないか、と。
そう思う度にその気持ちをぐっと堪え、僕は絵を見続けた。

一通りの絵を見終えると、僕は彼女の元へ歩み寄る。
彼女は一枚の絵の前にいた。

それは一組の男女がお互い背を向けて歩いていこうとしている絵。
男はリボンのついた小箱を握り締めて、女は涙を流している。

その絵を見る彼女の表情は寂しそうだった。
僕は彼女の肩にそっと手を乗せる、すると彼女はふり返り、僕を見た。

彼女の顔は笑顔になる。

僕はこの空間を見るために彼女と来ているのかもしれない。
ココのどの空間からも感じられない大切なものを感じる為に。

春花

「え~去年も無事に黒字成績となり、とても嬉しい限りでありますが…」
会社で恒例の花見大会も架橋になり、最後の社長の〆のスピーチがおこなわれていた。
例年よりかなり寒いためほとんどの社員は酒を飲んで、寒さから耐えるような花見であったのでスピーチのため立ち上がった社長はもう足元もおぼつかない。

だけどそんな事よりも俺は社長の近くにいる新入社員の一人に目をとられていた。
花見が始まってからも花を見るフリをして彼女をちょっとみて酒を飲む。理由は明確ではないけれど気になって仕方がなかった。

長いスピーチも酔った部長のツッコミにより中断しお開きとなり、上層部のお偉いさん達は二次会へ向かった。
とりあえず片づけが終わったら合流する予定になっているのだが、
なんで俺一人で片付けなければならないんだと社会の厳しさを痛感していた。

飲みほしてつぶれた缶ビール、食べかけの柿ピー、飲みかけのお酒に浮いた桜の花びら。
あっそうだ花見だったんだな、と空を見上げるといつの間にか雲がかかってそして雨が降ってきた。

ゴミを捨てあとは大きなレジャーシートを畳むだけ。
そう思った時俺の頭上に傘が現れた。

「おつかれさまです」
傘を持っていたのはあの彼女。

「雨が降ってきたのにまだ残ってらっしゃると聞いたので」
驚いた表情をしていたのか彼女は俺にここに来た説明をした。

最後のレジャーシートを畳みながら俺は彼女に礼を告げる。
その言葉は自分でもわかるぐらい改まった言い方だった。

荷物をバッグに詰め彼女の持つ傘に入り歩き出す。
人は沢山いるのに傘に当たる雨音だけが俺の耳には響いてくる。
彼女の体が濡れないように自分の肩を濡らして歩いたが、彼女はそんなことも気にせず、自分の肩を濡らし、雨と一緒に桜の花びら。

ふと見上げるとビニール傘にも沢山の桜の花びら。
彼女との出会いはそんな春らしい日であった。

いつもの夜に

僕は久しぶりに早く仕事が終わり、夕食であろうお惣菜の匂いがする電車に乗る。
この匂いをきっかけに二人で会話したあの時間は、今は思い出したくはない過去。

何度聞いてもなれないあの最後の言葉。

僕が悪かったのか彼女が悪かったのか。
そういうことではないのはわかっていて、だけど考えても考えても僕の心は納得をしてくれない。

子供の頃のように大泣きできればいいのに、
もう大人だがなのか涙もでずにただ胸の奥が痛むだけ。
はじめてではない痛みだけど1年という歳月はいろいろな場所をきっかけを作るには長すぎた。

車窓にみえる通り過ぎる町並み、人気有名人の釣り広告、ぼんやりとうつる三日月。
目にうつるほどんどのものがあの時と変わらないのに、感じるものは全然違う。

もう戻ることはできないし、昔描いていた未来はやってこない。
こんな事を繰り返してもう3ヶ月が過ぎようとしている。

するとポケットの中の携帯が震えだす。
その瞬間いらぬ期待が脳裏をかすめるが、着信相手は古くからの友人。

送られてきたメールを読み、軽い笑みを浮かべ次の駅に到着すると同時にホームへでて電話をかけた。

とりあえず飲みにでもいかないか。

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